CQ3 成人初発膠芽腫に対する化学療法の種類と意義はどのようなものがあるか?
A テモゾロミド
 推  奨 1 
18歳以上70歳以下の成人初発膠芽腫患者に対して,手術後,経口内服薬テモゾロミドを放射線治療期間中,ならびに放射線終了後投与する(Stuppプロトコール)。(推奨グレードA)
 解  説 
 テモゾロミド(temozolomide)は経口薬として腸管吸収性にすぐれた第2世代のアルキル化薬で,さらに血液脳関門を通過しやすいという利点を持つ。2005年に発表された成人初発膠芽腫に対するランダム化比較試験の結果により,その有効性が証明され,膠芽腫に対する標準治療薬と位置づけられた1)(レベルⅠb)。
 上記試験はEuropean Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)とNational Cancer Institute of Canada(NCIC)両グループを中心とした多施設共同試験であり,18歳以上70歳以下の成人初発膠芽腫573例に対して手術後,放射線単独治療(60 Gy)を標準治療(control arm)とし,放射線治療(60 Gy)+テモゾロミド併用化学療法とそれに続くテモゾロミド補助化学療法を試験治療とするランダム化比較試験である。
 テモゾロミドの具体的な投与方法は,
 ① 放射線治療期間中,テモゾロミド75 mg/m2を放射線治療終了日まで49日間を上限として連日内服(併用化学療法)。
 ②放射線治療終了日から4週間の休薬期間を設け,以下の維持化学療法を開始する。
 ③ テモゾロミド150~200 mg/m2を5日間内服・23日間休薬(5—day on/23—day off)とし,28日を1サイクルとした維持化学療法を6サイクル行う。
 維持化学療法中のテモゾロミド投与量は,1サイクル時は150 mg/m2/日とし,1サイクル中に血液毒性を認めなかった場合,2サイクル以降は200 mg/m2/日に増量を行うこととした(Stuppプロトコール)。この結果,放射線単独治療群(286例)とStuppプロトコール群(287例)の生存期間中央値はそれぞれ,12.1カ月(95%CI:11.3—13.0)と14.6カ月(95%CI:13.2—16.8)であり,有意差をもってStuppプロトコール群の全生存期間延長を認めた(HR=0.63,95%CI:0.52—0.75,p<0.001)。血液毒性は標準治療群と比べると,試験治療群において有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events:CTCAE)でグレード3以上の血液毒性の頻度が数%増える程度であった。非血液毒性のなかでは倦怠感が最も多く観察されたが,その出現頻度は標準治療群26%,試験治療群33%と両群で有意差はなかった。その他の非血液毒性においても大きな差を認めなかった。有害事象については両群で特記すべき差異はなく,Stuppプロトコールは安全性の高い治療方法であると考えられた。
 この臨床試験に関しては,最近長期経過観察の結果が報告された2)(レベルⅠb)。放射線単独治療群とStuppプロトコール群の生存割合はそれぞれ,2年:10.9% vs 27.2%,3年:4.4% vs 16.0%,4年:3.0% vs 12.1%。5年:1.9% vs 9.8%であり,Stuppプロトコール群で有意差をもって生存割合が高値であった(HR=0.6,95%CI:0.5—0.7,p<0.0001)。5年という長期生存割合においても,初発膠芽腫に対してStuppプロトコール群が放射線単独治療群に比較して有効であることが示された。
 その後,日本人においても,テモゾロミドの薬物動態や副作用,治療有効性に人種差がないことが証明されている3,4)(いずれもレベルⅡa)。
 2005年に発表されたStuppプロトコールでは,テモゾロミド補助化学療法は最高6サイクルまでの施行が計画された1)(レベルⅠb)。その後の膠芽腫に対する前方視的な臨床研究では補助化学療法を何サイクル行うべきか,サイクル数を規定するような試みはなされておらず,補助化学療法施行サイクル数の標準化に関する論理的根拠は得られていない。以下に補助化学療法施行サイクル数に参考となる臨床研究を掲げる5,6)(いずれもレベルⅢ)。
 1997~2003年においてドイツの50施設で,悪性神経膠腫患者(gradeⅢ/Ⅳ)を12サイクル以上のテモゾロミド5—day on/23—day offでの治療(施行サイクル数中間値:13サイクル)を行った結果を解析した。その結果,無増悪生存期間中央値は,15.5カ月であり,グレード3以上の有害事象は,約10%であった5)。Stuppプロトコールにおいて,補助化学療法を13サイクル前後まで延長することは毒性の観点から容認できる治療法であることが示唆された。
 Urgitiらは,後方視的研究において52例の初発膠芽腫を,テモゾロミド(5—day on/23—day off)による補助化学療法を6サイクルで中止した23例と7サイクル以上続けた29例を比較した。両群間で年齢,KPSや手術摘出度,MGMT遺伝子プロモーター領域のメチル化などの予後因子は大きな偏りは認められなかったが,生存期間中央値は,それぞれ16.5カ月と24.6カ月(p=0.031)であり,6サイクル以上行った群において,生命予後が延長することを報告した6)(レベルⅢ)。
 テモゾロミドの薬理作用はDNAにメチル基を付加することに基づくが,その抗腫瘍活性はDNAのグアニン塩基のO6位をメチル化することによるものが最も大きい。MGMTはメチル化グアニン塩基からメチル基を除去しDNAのメチル化を修復し,自身はメチル化され不活性体となる。不活性体であるメチル化MGMTは細胞内で分解される。この修復過程は不可逆的であるため,メチル化DNAの部分が多ければ,MGMTにより修復反応を促進させれば理論上,MGMT活性を著明に低下させることが可能になる7)(レベルⅡb)。即ちテモゾロミドを早急に腫瘍細胞に曝露させ,DNAのメチル化を促進し,MGMTによるDNA修復過程を活性化させ,MGMTを枯渇化することにより,テモゾロミド耐性を克服できる可能性が提示されてきた8,9)(いずれもレベルⅡa)。
 テモゾロミドの曝露期間を増加させる治療法の代表はテモゾロミド増量療法であるが10,11)(いずれもレベルⅡa),初発膠芽腫におけるStuppプロトコールの維持化学療法部分のテモゾロミドを増量する治療法は以下の臨床試験の結果,その効果を否定された。
 RTOG,EORTCとNorth Central Cancer Treatment Group(NCCTG)によって初発膠芽腫を対象に行われた第Ⅲ相試験(RTOG0525)は,Stuppプロトコールを標準治療として,Stuppプロトコール維持化学療法部分を3—week on/1—week off(75—100 mg/m2/日)とする試験治療を採用した。1,173例の登録があり,833例がランダム化割り付けされた。その結果,生存期間中央値(標準治療16.6カ月,試験治療14.9カ月,p=0.63,HR=1.03,95%CI:0.88—1.20)と無増悪生存期間中央値(それぞれ5.5カ月,6.7カ月,p=0.06,HR=0.87,95%CI:0.75—1.00)ともに2群間で有意差を示すことができなかった。MGMT遺伝子プロモーター領域のメチル化群は非メチル化群に比べ有意差をもって全生存期間(それぞれ21.2カ月,14.0カ月,p<0.01,HR=0.58,95%CI:0.48—0.69),無増悪生存期間(それぞれ8.7カ月,5.7カ月,p<0.01,HR=0.61,95%CI:0.52—0.73)の延長が示され,治療反応性(p=0.021)も良好であった。放射線併用期の代表的な有害事象はリンパ球減少症(全症例の12%),好中球減少症(全症例の3.6%),血小板減少症(全症例の6.8%)であり,好中球減少症での治療関連死1例が発生したが,日和見感染症は観察されなかった。維持化学療法期では試験治療群にグレード3以上の有害事象が有意差をもって高率に認められ(それぞれ34%,53%,p<0.001),多くはリンパ球減少症と疲労であった12)(レベルⅠb)。

 <注意>
 テモゾロミドの3—week on/1—week off:添付文書に記載されていない投与方法で,国内では承認されていない。

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1) Stupp R, Mason WP, van den Bent MJ, et al. European Organisation for Research and Treatment of Cancer Brain Tumor and Radiotherapy Groups;National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group. Radiotherapy plus concomitant and adjuvant temozolomide for glioblastoma. N Engl J Med. 2005;352(10):987—96.(レベルⅠb)
2) Stupp R, Hegi ME, Mason WP, et al. European Organisation for Research and Treatment of Cancer Brain Tumour and Radiation Oncology Groups;National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group. Effects of radiotherapy with concomitant and adjuvant temozolomide versus radiotherapy alone on survival in glioblastoma in a randomised phaseⅢ study:5—year analysis of the EORTC—NCIC trial. Lancet Oncol. 2009;10(5):459—66.(レベルⅠb)
3) Aoki T, Nishikawa R, Mizutani T, et al. Pharmacokinetic study of temozolomide on a daily—for—5—days schedule in Japanese patients with relapsed malignant gliomas:first study in Asians. Int J Clin Oncol. 2007;12(5):341—9.(レベルⅡa)
4) 西川亮,渋井壮一郎,丸野元彦,他.初回再発の退形成性星細胞腫患者に対するTemozolomide単剤投与の有効性および安全性の検討 多施設共同第Ⅱ相試験.癌と化学療法.2006;3(9):1279—85.(レベルⅡa)
5) Hau P, Koch D, Hundsberger T, et al. Safety and feasibility of long—term temozolomide treatment in patients with high—grade glioma. Neurology. 2007;68(9):688—90.(レベルⅢ)
6) Roldán Urgoiti GB, Singh AD, Easaw JC. Extended adjuvant temozolomide for treatment of newly diagnosed glioblastoma multiforme. J Neurooncol. 2012;108(1):173—7.(レベルⅢ
7) Tolcher AW, Gerson SL, Denis L, et al. Marked inactivation of O6—alkylguanine—DNA alkyltransfer-ase activity with protracted temozolomide schedules. Br J Cancer. 2003;88(7):1004—11.(レベルⅡb)
8) Esteller M, Garcia—Foncillas J, Andion E, et al. Inactivation of the DNA—repair gene MGMT and the clinical response of gliomas to alkylating agents. N Engl J Med. 2000;343(19):1350—4.(レベルⅡa)
9) Hegi ME, Diserens AC, Gorlia T, et al. MGMT gene silencing and benefit from temozolomide in glio-blastoma. N Engl J Med. 2005;352(10):997—1003.(レベルⅡa)
10) Brandes AA, Tosoni A, Cavallo G, et al. Temozolomide 3 weeks on and 1 week off as first—line ther-apy for recurrent glioblastoma:phaseⅡ study from gruppo italiano cooperativo di neuro—oncologia(GICNO). Br J Cancer. 2006;95(9):1155—60.(レベルⅡa)
11) Wick A, Felsberg J, Steinbach JP, et al. Efficacy and tolerability of temozolomide in an alternating weekly regimen in patients with recurrent glioma. J Clin Oncol. 2007;25(22):3357—61.(レベルⅡa)
12) Gilbert MR, Wang M, Aldape KD, et al. Dose—dense temozolomide for newly diagnosed glioblas-toma:a randomized phaseⅢ clinical trial. J Clin Oncol. 2013;31(32):4085—91.(レベルⅠb)
 推  奨 2 
Stuppプロトコール治療を遂行中,放射線治療終了後に偽増悪(pseudoprogression)が示唆される場合はテモゾロミド維持化学療法を継続する。(推奨グレードC1)
 解  説 
 Chamberlainらは成人初発膠芽腫に対して,Stuppプロトコールを施行した51例中,26例(51%)で6カ月以内に臨床症状および画像上の増悪を認め,そのうち15例(29%)に腫瘍の再摘出術が行われ,7例の病理所見において壊死像が大部分であったと報告した。この事実より,初期治療早期での画像上の造影病変の増大のみで病勢進行と判断し治療法を変更してしまうと,Stuppプロトコールの治療効果を正確に判定できなくなる可能性を指摘している1)(レベルⅢ)。本論文以降,治療早期に造影病変の増大にもかかわらず,臨床症状の悪化に乏しく,摘出組織での組織所見が壊死像主体である病態を偽増悪(pseudoprogression)と呼称することが定着した。
 一方,Brandesらは,成人初発膠芽腫に対してStuppプロトコールを行った症例で,MRI所見の経過から判断したpseudoprogressionの有無と,初回摘出組織のMGMT遺伝子プロモーター領域のメチル化状態との関係について前方視的に検討した。Pseudoprogressionの出現と無増悪生存期間・全生存期間の相関についても解析している。103例中,MGMT遺伝子プロモーター領域のメチル化を認めた36例,非メチル化症例は67例であった。維持化学療法直前に,MRI上造影病変の増大が観察されたのは103例中50例であり,この50例におけるテモゾロミド(temozolomide)維持化学療法2サイクル後のMRI所見は,pseudoprogression(病変縮小または不変)状態32例,true progression(症状増悪の認められた評価病変増大)状態18例であった。本50例のなかでMGMT遺伝子プロモーター領域のメチル化23例のうちpseudoprogressionが観察されたものは21例(91%),非メチル化27例のうちpseudoprogressionが観察されたものは11例(41%)であった。以上の結果より,腫瘍のMGMT遺伝子プロモーター領域のメチル化とpseudoprogressionの発現に有意な相関が示された(p=0.0002)。また,MGMT遺伝子プロモーター領域のメチル化とpseudoprogressionの出現は,生存期間延長とそれぞれに有意に相関していることが判明した(それぞれp=0.001,p=0.045)2)(レベルⅡb)。
 Pseudoprogressionの場合は化学放射線治療後3カ月以降に腫瘍縮小が観察される傾向が強くなり,真の増悪との鑑別が可能になってくる。逆に3カ月以内では真の増悪例との鑑別が特に問題となってくる3)(レベルⅣ)。造影部分の増大にもかかわらず神経症状の悪化のない場合は,pseudoprogressionの可能性も考え,さらに数サイクルのテモゾロミドの維持化学療法を追加するのが望ましい。両者の鑑別が困難な場合は,積極的に手術を行い,組織診断を行うことも重要である。今後,さらなる経験の蓄積により,pseudoprogressionのより正確な頻度や病態への理解を深めていかなければならない。
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1) Chamberlain MC, Glantz MJ, Chalmers L, et al. Early necrosis following concurrent Temodar and radiotherapy in patients with glioblastoma. J Neurooncol. 2007;82(1):81—3.(レベルⅢ)
2) Brandes AA, Franceschi E, Tosoni A, et al. MGMT promoter methylation status can predict the incidence and outcome of pseudoprogression after concomitant radiochemotherapy in newly diag-nosed glioblastoma patients. J Clin Oncol. 2008;26(13):2192—7.(レベルⅡb
3) Brandsma D, Stalpers L, Taal W, et al. Clinical features, mechanisms, and management of pseudopro-gression in malignant gliomas. Lancet Oncol. 2008;9(5):453—61.(レベルⅣ)
 推  奨 3 
初発または再発悪性神経膠腫に対するテモゾロミド治療において,適宜ニューモシスチス肺炎に対する予防処置を行う。(推奨グレードC1)
 解  説 
 初発膠芽腫を対象としたテモゾロミド(temozolomide)治療の第Ⅱ相試験の中間解析において15例中2例にニューモシスチス(pneumocystis jironecii)肺炎が報告され,その予防処置を講じる必要が緊急に発生した1)(レベルⅢ)。この際に参考とされたのはhuman immunodeficiency virus(HIV)感染者に対するニューモシスチス肺炎予防策であり2)(レベルⅠb),具体的にはスルファメトキサゾール・トリメトプリム(sulfamethoxazole・trimethoprim)合剤(ST合剤:国内承認薬の倍量力価を含有)の内服,またはペンタミジン(pentamidine)の噴霧吸入であった3)(レベルⅡa)。この企業主導治験においては,放射線治療時とそれに続く休薬期間4週間の計10週間に,このいずれかの処置が義務づけられ,以降,第Ⅱ相試験1)(レベルⅢ),続く第Ⅲ相試験4)(レベルⅠb)においていずれもテモゾロミド併用群にニューモシスチス肺炎は観察されなかった。
 ニューモシスチス肺炎の罹患はテモゾロミド使用時のリンパ球減少症やCD4陽性細胞の減少と関連している可能性が示唆されており,テモゾロミド使用にあたっては適宜その予防策を講じる必要がある5)(レベルⅢ)。
 上記報告に従って,我が国でのニューモシスチス肺炎の予防対策として
 ①ST合剤1錠を隔日あるいは連日内服(4週間継続を1サイクルとする)
 ②ペンタミジン300 mgを1回噴霧吸引(4週間を1サイクルとする)
 が推奨される。
 ST合剤は安価で,ニューモシスチス肺炎予防の第一選択であるが,皮膚そう痒感,皮疹等の発現頻度が高く,これら症状発現時には速やかに②に変更する。アトバコン(atovaquone)は,2012年4月にニューモシスチス肺炎の予防措置として我が国で保険承認されたが,テモゾロミド使用時のニューモシスチス肺炎予防の第一選択薬ではなく,HIV感染者やニューモシスチス肺炎のリスクを有する患者(目安としてCD4陽性細胞数が200/mm3未満,ニューモシスチス肺炎の既往歴がある等)における予防薬という位置づけで使用されている。
 そのほかにテモゾロミド使用時に発生しうる感染症としてサイトメガロウイルス(cytemegalovirus)感染症があげられる。特にサイトメガロウイルス肺炎は,ST合剤等によるニューモシスチス肺炎予防措置を行っている患者で間質性肺炎様所見が観察された場合には第一に疑う必要がある。ニューモシスチス肺炎患者では血清β—Dグルカンが高値であるが,サイトメガロウイルス肺炎・感染症では,血清β—Dグルカン正常・pp65抗原(C7—HRP)の高値が診断の補助となる。サイトメガロウイルス感染症にはガンシクロビル(ganciclovir)の投与が有効である5)(レベルⅤ)。

<注意>
ペンタミジン(pentamidine):ニューモシスチス肺炎の予防目的で使用する場合は適応外使用
アトバコン(atovaquone):ニューモシスチス肺炎の予防目的で使用する場合は,ニューモシスチス肺炎のリスク(CD4陽性細胞数が目安として200/mm3未満,ニューモシスチス肺炎の既往歴がある等)を有する患者を対象とする。

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1) Stupp R, Dietrich PY, Ostermann Kraljevic S, et al. Promising survival for patients with newly diag-nosed glioblastoma multiforme treated with concomitant radiation plus temozolomide followed by adjuvant temozolomide. J Clin Oncol. 2002;20(5):1375—82.(レベルⅢ)
2) Kovacs JA, Masur H. Prophylaxis against opportunistic infections in patients with human immunode-ficiency virus infection. N Engl J Med. 2000;342(19):1416—29.(レベルⅢ)
3) 西川亮,渋井壮一郎,丸野元彦,他.初回再発の退形成性星細胞腫患者に対するTemozolomide単剤投与の有効性および安全性の検討 多施設共同第Ⅱ相試験.癌と化学療法.2006;33(9):1279—85.(レベルⅡa)
4) Stupp R, Mason WP, van den Bent MJ, et al. European Organisation for Research and Treatment of Cancer Brain Tumor and Radiotherapy Groups;National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group. Radiotherapy plus concomitant and adjuvant temozolomide for glioblastoma. N Engl J Med. 2005;352(10):987—96.(レベルⅠb)
5) 大野誠,沖田典子,成田善孝.テモゾロミドと日和見感染―ニューモシスチス肺炎とサイトメガロウイルス・B型肝炎ウイルスの活性化について―脳神経外科速報2013;23(3):316—23.(レベルⅤ)
 推  奨 4 
初発または再発悪性神経膠腫に対するテモゾロミド治療を行う場合,血清中のHBs抗原,HBc抗体,HBs抗体を測定し,肝臓専門医や内科医と相談して,その患者のB型肝炎状態に応じた対応を適切に行う。(推奨グレードC1)
 解  説 
 以前よりHBs抗原陽性のB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)キャリアに合併した造血器腫瘍や固形がんの患者において,がん薬物療法によるHBVの急激な増殖,すなわちHBVの再活性化により致死的な重症肝炎が発症することが知られていた。このようなHBV再活性化は,がん薬物療法を受けるHBVキャリアの24~53%に発症すると報告されており,劇症化する割合が高く,抗ウイルス薬を投与しても予後不良である1)(レベルⅤ)。したがって,がん薬物療法を受けるHBVキャリアでは,肝炎が発症する前から抗ウイルス薬の投与を開始することが重要である1)(レベルⅤ)。一方,HBs抗原陰性,HBc抗体ないしHBs抗体陽性のHBV既往感染例では,従来は臨床的には疾病の治癒状態と考えられてきたが,肝臓や末梢血単核球内では低レベルながらHBV—DNAの複製が長時間持続し,リツキシマブ(retuximab)などの免疫抑制作用のある薬剤の投与により,HBVの再活性化と重症肝炎が発生することも明らかになっている1)(レベルⅢ)。このような既往感染例からのHBV再活性化をde novo B型肝炎と呼び,その頻度は移植後やリツキシマブを含む併用化学療法などを受けた高リスク群で10~20%,通常の全身化学療法では1.0~2.7%と報告されている1)(レベルⅤ)。HBV再活性化には不明な点も多いものの,がん化学療法薬や免疫抑制薬の投与によりHBVが免疫系のサーベイランスから逃れ肝細胞内で増殖し,主には治療終了後に生じるcytotoxic T cellのrebound immune responseにより,広範な感染肝細胞の破壊を伴う重症肝炎が惹起されるものと考えられている。またHBV遺伝子にはglucocorticoid enhancement elementが存在し,ステロイドにより直接的にウイルス複製が助長されることも要因の一つとされている1)(レベルⅤ)。
 初発膠芽腫においてStuppプロトコールの放射線化学療法後早期に,HBVの再活性化を来たし,重症肝炎を呈した症例が4例報告されている2—5)(いずれもレベルⅣ)。4例中3例で初期治療前のHBs抗原が陽性,1例は不明であり,ステロイド使用・不使用,使用状況の詳細も記載されていない。そのためテモゾロミド(temozolomide)によるリンパ球減少,特にCD4陽性細胞の細胞数低下・機能低下が直接HBV再活性化に関連しているとは断定できないが,4例中1例は重症肝炎により死亡していることや,HBV再活性化による重症肝炎は致死率が高いことは衆知の事実であるため,テモゾロミド使用に際してはHBV再活性化について十分な注意喚起が必要である。
 我が国におけるHBV感染者は総人口の0.8%,約100万人程度存在すると推定されており,厚生労働省「肝硬変を含めたウイルス性肝疾患の治療の標準化に関する研究班」および「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班」の合同ワーキンググループは,「免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン」を策定している1)(レベルⅢ)。それによれば,免疫抑制・化学療法を受ける全患者に対してHBs抗原,HBc抗体,HBs抗体のスクリーニング検査を行い,HBs抗原陽性例すなわちHBVキャリアでは肝臓専門医と十分な連携を取りながら抗ウイルス薬の投与を行うよう推奨されている。一方,HBs抗原陰性,HBc抗体ないしHBs抗体陽性のHBV既往感染例については,HBV—DNA定量の定期的なモニタリングを行うこととしている。すなわち,de novo B型肝炎ではその発症に先立ってHBV—DNA量が上昇するため,HBV—DNA量が検出感度以上になった時点で直ちに抗ウイルス薬投与を開始するとされている。また,de novo B型肝炎の多くががん薬物療法の終了後に発症しているため,HBV—DNAのモニタリングは治療期間中および終了後も少なくとも12カ月まで継続するべきとしている。これら記載は臨床試験からの知見の裏打ちには乏しいが,HBV再活性化による重症肝炎は致死率が高いことからも,上記「免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン」に沿った対応が望ましい1)
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1) 坪内博仁,熊田博光,清澤研道,他.免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策 厚生労働省「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班劇症肝炎分科会および「肝硬変を含めたウイルス性肝疾患の治療の標準化に関する研究」班合同報告.肝臓.2009;50(1):38—42.(レベルⅤ)
2) Chheda MG, Drappatz J, Greenberger NJ, et al. Hepatitis B reactivation during glioblastoma treat-ment with temozolomide:a cautionary note. Neurology. 2007;68(12):955—6.(レベルⅣ))
3) Grewal J, Dellinger CA, Yung WK. Fatal reactivation of hepatitis B with temozolomide. N Engl J Med. 2007;356(15):1591—2.(レベルⅣ)
4) Fujimoto Y, Hashimoto N, Kinoshita M, et al. Hepatitis B virus reactivation associated with temozolo-mide for malignant glioma:a case report and recommendation for prophylaxis. Int J Clin Oncol. 2012;17(3):290—3.(レベルⅣ)
5) Ohno M, Narita Y, Miyakita Y, et al. Reactivation of hepatitis B virus after glioblastoma treatment with temozolomide——case report. Neurol Med Chir(Tokyo). 2011;51(10):728—31.(レベルⅣ))
B ニトロソウレア系薬剤
 推  奨 5 
初発成人膠芽腫に対してニムスチン単剤あるいはニムスチンを含む化学療法を用いる。(推奨グレードC1)
 解  説 
 1980年のWalkerらの報告で,悪性神経膠腫に対してニトロソウレア系薬剤と放射線治療を含む治療法の予後が良好な傾向にあったことから,米国を中心に,神経膠腫に対してはニトロソウレア系薬剤[カルムスチン(carmustine:BCNU),セムスチン(semustine:methyl—CCNU),ロムスチン(lomustine:CCNU)]が中心的な治療薬となった1)(レベルⅢ)。1993年,初発退形成星細胞腫(2,362例),膠芽腫(3,004例)を対象とした大規模なメタアナリシスが行われ,放射線治療にニトロソウレア系薬剤を併用することにより,1年生存割合が10.1%上昇した(95%CI:6.8—13.3%)という報告がなされた2)(レベルⅠa)。以降,ニトロソウレア系薬剤を併用する化学放射線療法が世界的に初発退形成星細胞腫および膠芽腫に対する標準治療であると考えられるようになった。日本では,2006年にテモゾロミド(temozolomide)が保険適用となるまで放射線治療と国内承認薬であるニムスチン(nimustine:ACNU)の併用療法が膠芽腫において,第Ⅲ相試験はなされてないものの,いわばみなし標準治療として広く行われていた3—5)(いずれもレベルⅢ)。
 ニムスチンを含む化学療法は膠芽腫に対して一定の効果は示しているものの,テモゾロミドとの抗腫瘍効果を比較する第Ⅲ相試験や放射線治療への上乗せ効果を検証する第Ⅲ相試験は行われていない。またニムスチンを含む化学療法はテモゾロミドに比べ有害事象が強い傾向があるという側面もある。以下に,成人初発膠芽腫に対して放射線治療とニムスチン単独,あるいはニムスチンを含む化学療法の効果を評価した臨床研究を紹介する。
 京都脳腫瘍グループは,97例の初発膠芽腫に対して,放射線治療(60 Gy)とニムスチン(60 mg/m2 第1治療日),カルボプラチン(carboplatine)(110 mg/m2 第1治療日),ビンクリスチン(vincristine)(0.6 mg/m2 第1・8・15治療日),インターフェロン—β(interferon—β)(10μg/日,週3回,第1週から第7週まで)併用化学療法の効果と安全性を第Ⅱ相試験で検討した。グレード3以上の毒性は10~20%を示した。無増悪生存期間中央値は10カ月(95%CI:8—12)であり,生存期間中央値は16カ月(95%CI:13—20)であった6)(レベルⅡa)。
 ドイツのNeuro—Oncology Workingグループ(NOA)は,初発悪性神経膠腫患者に対して標準的放射線療法に併用する化学療法をニムスチン+シタラビン(cytarabine:Ara—C)群とニムスチン+テニポシド(teniposide:VM26)群の2群にランダム化割り付けする第Ⅲ相試験を計画した(NOA—01)。1994~2000年まで,375例の患者が登録され,初発膠芽腫おける生存期間中央値はそれぞれ15.7カ月と17.3カ月,2年生存割合はそれぞれ29%と25%であり,両群間に有意差を認めなかった(HR=1.02,p=0.889)7)(レベルⅠb)。
 また,英国では1988~1997年の間に15施設で悪性神経膠腫674例の患者を対象にランダム化比較試験が行われた。放射線治療単独群と放射線治療に併用してPCV療法(プロカルバジン(procarbazine)100 mg/m2 第1~10治療日,ロムスチン100 mg/m2 第1治療日,ビンクリスチン1.5 mg/m2(最大2 mg)第1・8・15治療日)を6週間ごとに施行する2群を設定し,PCV療法の上乗せ効果を検証した。放射線単独治療群310例,PCV療法併用群307例が登録され,生存期間中央値は放射線単独治療群9.5カ月に対してPCV療法併用群10カ月であり,両者の間に有意差はなかった(HR=0.95,95%CI:0.81—1.11,p=0.50)。よって,悪性神経膠腫に対してPCV療法は有意な上乗せ効果を示すことはできなかった8)(レベルⅠb)。
 Japan Clinical Oncology Group(JCOG)は,悪性神経膠腫(星細胞腫gradeⅢ/Ⅳ)に対して放射線治療に加えてニムスチン80 mg/m2を第1および第36治療日に投与する対象治療群(A群)とプロカルバジン80 mg/m2(第1~10治療日および第36~45治療日連日投与)+ニムスチン80 mg/m2(第8および第43治療日)を投与する試験治療群(B群)の2群を比較検討した(JCOG0305)。維持療法として,それぞれの化学療法を56日ごとに12サイクル繰り返す予定とした。19施設より111例が登録された。膠芽腫に限れば生存期間中央値はA群(40例)16.2カ月,B群(41例)18.7カ月,無増悪生存期間中央値はA群6.0カ月,B群6.3カ月であった。全生存期間では両群間に有意差は認められなかった。有害事象として,グレード3以上の白血球減少は,A群38.9%,B群73.2%,血小板減少はA群5.6%,B群50.0%に観察された9)(レベルⅡa)。

<注意>
 カルムスチン(carmustine:BCNU):注射薬は国内未承認,徐放性ポリマーは悪性神経膠腫に対して承認
 セムスチン(semustine:methyl—CCNU):国内未承認
 ロムスチン(lomustine:CCNU):国内未承認
 カルボプラチン(carboplatin):膠芽腫に対しては適応外使用
 シタラビン(cytarabin:Ara—C):膠芽腫に対しては適応外使用
 テニポシド(teniposide:VM26):国内未承認

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1) Walker MD, Green SB, Byar DP, et al. Randomized comparisons of radiotherapy and nitrosoureas for the treatment of malignant glioma after surgery. N Engl J Med. 1980;303(23):1323—9.(レベルⅠb)
2) Fine HA, Dear KB, Loeffler JS, et al. Meta—analysis of radiation therapy with and without adjuvant chemotherapy for malignant gliomas in adults. Cancer. 1993;71(8):2585—97.(レベルⅠa)
3) Takakura K, Abe H, Tanaka R, et al. Effects of ACNU and radiotherapy on malignant glioma. J Neu-rosurg. 1986;64(1):53—7.(レベルⅢ)
4) Matsutani M, Nakamura O, Nakamura M, et al. Radiation therapy combined with radiosensitizing agents for cerebral glioblastoma in adults. J Neurooncol. 1994;19(3):227—37.(レベルⅢ)
5) Yoshida J, Kajita Y, Wakabayashi T, et al. Long—term follow—up results of 175 patients with malig-nant glioma:importance of radical tumour resection and postoperative adjuvant therapy with inter-feron, ACNU and radiation. Acta Neurochir(Wien). 1994;127(1—2):55—9.(レベルⅢ)
6) Aoki T, Takahashi JA, Ueba T, et al. PhaseⅡ study of nimustine, carboplatin, vincristine, and inter-feron—beta with radiotherapy for glioblastoma multiforme:experience of the Kyoto Neuro—Oncol-ogy Group. J Neurosurg. 2006;105(3):385—91.(レベルⅡa)
7) Weller M, Muller B, Koch R, et al. Neuro—Oncology Working Group 01 trial of nimustine plus tenipo-side versus nimustine plus cytarabine chemotherapy in addition to involved—field radiotherapy in the first—line treatment of malignant glioma. J Clin Oncol. 2003;21(17):3276—84.(レベルⅠb))
8) Medical Research Council Brain Tumor Working P. Randomized trial of procarbazine, lomustine, and vincristine in the adjuvant treatment of high—grade astrocytoma:a Medical Research Council trial. J Clin Oncol. 2001;19(2):509—18.(レベルⅠb)
9) Shibui S, Narita Y, Mizusawa J, et al. Randomized trial of chemoradiotherapy and adjuvant chemo-therapy with nimustine(ACNU)versus nimustine plus procarbazine for newly diagnosed anaplastic astrocytoma and glioblastoma(JCOG0305). Cancer Chemother Pharmacol. 2013;71(2):511—21.(レベルⅡa)
C インターフェロン—β
 推  奨 6 
初発成人膠芽腫に対して,術後ニムスチンやテモゾロミドの化学療法に併用してインターフェロン‒βを投与する。(推奨グレードC1)
 解  説 
 永井は,悪性神経膠腫の比較臨床試験試験において,A群(55例):放射線治療(50~60 Gy)+ニムスチン(nimustine,ACNU)(80 mg/m2,Day 1とDay 36)とB群(55例):放射線治療(50~60 Gy)+ニムスチン(80 mg/m2,Day 1とDay 36)+インターフェロン—β(interferon—β)200万単位/m2(週5回,8週間,点滴静注)の2群を比較検討した。奏効割合はそれぞれ19.6%と41.2%で有意差が認められた(p<0.05)が,生存期間や有害事象についての検討は報告されていない1)(レベルⅡa)。その後,Yoshidaらは,1994年,過去20年間において放射線とニムスチンとインターフェロン—βの併用で治療を行った悪性神経膠腫175例(110例の膠芽腫と65例の退形成星状細胞腫)の長期成績を後方視的解析した。十分な統計学的検討はなされていないが,3年および5年生存割合はそれぞれ42%と24%であった。さらに問題となる有害事象は観察されなかった2)(レベルⅢ)。
 1998~1999年の間にColmannらは,MD Anderson Cancer Centerを中心に,初発膠芽腫109例に対するインターフェロン—βの補助療法の第Ⅱ相試験の結果を報告した。初発膠芽腫に対して手術後放射線治療を行い,その後インターフェロン—β(600万単位/body,筋肉内投与)を週3回に投与した。これら症例の生存期間中央値は13.4カ月であり,同施設でのhistorical control 1,657症例に比較して有意差はないものの生存期間が延長する傾向を認めた(HR=1.27,95%CI:0.94—1.63,p=0.19)3)(レベルⅡa)。
 これらの臨床試験結果や培養細胞を用いた基礎実験の研究成果を踏まえ,標準治療であるStuppプロトコールにインターフェロン—βを併用することで,さらなる治療効果が得られる事が仮説として提唱され,インターフェロン—βとテモゾロミド(temozolomide)併用療法の第Ⅰ相試験が行われた4)(レベルⅡb)。悪性神経膠腫(膠芽腫,退形成性星細胞腫,または,退形成性乏突起膠細胞系腫瘍)を対象とした。導入治療部分のStuppプロトコールにインターフェロン—β(300万単位/回,隔日週3回点滴静注)を併用,維持治療は,Stuppプロトコールの補助化学療法部分にインターフェロン—β(300万単位/回/日,28日間隔)を併用し,6サイクル以上施行することとした。初発例には導入・維持療法両者が,再発例には維持療法単独治療が行われた。初発例16例,再発例7例が登録された。導入療法期の15例ではグレード3以上の有害事象は白血球減少(1例),好中球減少(2例)が観察された。維持治療期の有害事象は18例(うち11例は初期治療から移行例)中,グレード3白血球減少は1例のみに観察された。これは日本で実施された32例の初回再発退形性成星細胞腫を対象にしたテモゾロミド(150~200 mg/m2,5日間,28日間隔)の第Ⅱ相試験の有害事象報告と比べても大きな差はなく,同治療の安全性は忍容できるものと考えられた。また,有効性に関しては登録後24週目までの奏効割合33%,初発膠芽腫10例の1年生存割合は50%,生存期間中央値は17カ月であった4)(レベルⅡb)。
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1) 永井政勝.悪性脳腫瘍に対するBRM療法の進歩.癌と化学療法.1991;18(2):188—94.(レベルⅡa)
2) Yoshida J, Kajita Y, Wakabayashi T, et al. Long—term follow—up results of 175 patients with malig-nant glioma:importance of radical tumour resection and postoperative adjuvant therapy with inter-feron, ACNU and radiation. Acta Neurochir(Wien). 1994;127(1—2):55—9.(レベルⅢ)
3) Colman H, Berkey BA, Maor MH, et al. PhaseⅡ Radiation Therapy Oncology Group trial of conven-tional radiation therapy followed by treatment with recombinant interferon—beta for supratentorial glioblastoma:results of RTOG 9710. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2006;66(3):818—24.(レベルⅡa)
4) Wakabayashi T, Kayama T, Nishikawa R, et al. A multicenter phaseⅠ trial of combination therapy with interferon—beta and temozolomide for high—grade gliomas(INTEGRA study):the final report. J Neurooncol. 2011;104(2):573—7.(レベルⅡb)
D カルムスチン徐放性ポリマー
 推  奨 7 
成人初発膠芽腫手術においてカルムスチン徐放性ポリマーを留置する。(推奨グレードC1)
 解  説 
 悪性神経膠腫の化学療法は,全身毒性などの限界より高濃度薬剤を腫瘍へ十分に到達させることが困難である。Siposらのグループは,生物分解性ポリマーにがん化学療法薬を包み込んで局所的に徐放する方法を開発した1)(レベルⅡb)。
 続いて同薬が初発悪性神経膠腫(gradeⅢ/Ⅳ)患者においても有効なことを検証するためのランダム化比較試験が施行された。同意取得後,手術前にカルムスチン(carmustine:BCNU)徐放性ポリマー処置群とプラセボ群にランダム化割り付けされた患者において,摘出術中の迅速病理診断で悪性神経膠腫の疑いと診断された場合,カルムスチン徐放性ポリマーまたはプラセボが腫瘍摘出腔に留置された。両群で244例が登録され,全例に手術後60 Gyの放射線治療が行われた。生存期間中央値はカルムスチン徐放性ポリマー群で13.9カ月,プラセボ群11.6カ月であり,有意差をもってカルムスチン徐放性ポリマー群が優れていた(HR=0.71,95%CI:0.52—0.96,p=0.03)。また,有害事象に大きな差は観察されなかった2)(レベルⅠb)。ただし,膠芽腫に限っての解析(カルムスチン徐放性ポリマー群101例,プラセボ群106例)では全生存期間に有意差は認められなかった(HR=0.76,95%CI:0.55—1.05,p=0.10)。
 上記以外の成人初発膠芽腫に対するカルムスチン徐放性ポリマー留置を含めた治療成績の検討は後方視的なものである。Johns Hopkins Hospitalからの報告では初発膠芽腫に対しカルムスチン徐放性ポリマー留置後放射線治療を行った78例の生存期間中央値12.4カ月,カルムスチン徐放性ポリマー留置後Stuppプロトコールを施行した30例の生存期間中央値20.7カ月であった3)(レベルⅢ)。Göttingen Universityからの報告では44例の成人初発膠芽腫に対し,カルムスチン徐放性ポリマー留置後Stuppプロトコールを施行した場合,無病生存期間中央値7.0カ月,生存期間中央値12.7カ月であった4)(レベルⅢ)。さらにこれらを含めた臨床研究を総括した報告によれば,成人膠芽腫新規診断例に対してカルムスチン徐放性ポリマー留置を含む化学放射線治療成績は概ね良好であるが,予後因子にばらつきが有り,Stuppプロトコールと前方視的な比較検証はなされておらず,あくまで後方視的研究という制限をもって評価するべき結果となっている5)(レベルⅢ)。  一方で徐放性ポリマー製剤留置後の本剤のCT/MRI上の特徴的な経時的変化やair形成6,7)(いずれもレベルⅢ),摘出腔の進行性増大8)(レベルⅢ)といった諸現象,本剤留置後,周囲脳実質の浮腫増強,手術創治癒遷延,髄液漏,頭蓋内感染,BCNU成分の脳室系への拡散等も留意すべき項目である5,8,9)(いずれもレベルⅢ)。
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1) Sipos EP, Tyler B, Piantadosi S, et al. Optimizing interstitial delivery of BCNU from controlled release polymers for the treatment of brain tumors. Cancer Chemother Pharmacol. 1997;39(5):383—9.(レベルⅡb)
2) Westphal M, Hilt DC, Bortey E, et al. A phase 3 trial of local chemotherapy with biodegradable car-mustine(BCNU)wafers(Gliadel wafers)in patients with primary malignant glioma. Neuro Oncol. 2003;5(2):79—88.(レベルⅠb)
3) McGirt MJ, Than KD, Weingart JD, et al. Gliadel(BCNU)wafer plus concomitant temozolomide therapy after primary resection of glioblastoma multiforme. J Neurosurg. 2009;110(3):583—8.(レベルⅢ)
4) Bock HC, Puchner MJ, Lohmann F, et al. First—line treatment of malignant glioma with carmustine implants followed by concomitant radiochemotherapy:a multicenter experience. Neurosurg Rev. 2010;33(4):441—9.(レベルⅢ)
5) Gutenberg A, Lumenta CB, Braunsdorf WE, et al. The combination of carmustine wafers and temo-zolomide for the treatment of malignant gliomas. A comprehensive review of the rationale and clini-cal experience. J Neurooncol. 2013;113(2):163—74.(レベルⅢ)
6) Hammoud DA, Belden CJ, Ho AC, et al. The surgical bed after BCNU polymer wafer placement for recurrent glioma:serial assessment on CT and MR imaging. AJR Am J Roentgenol. 2003;180(5):1469—75.(レベルⅢ)
7) Prager JM, Grenier Y, Cozzens JW, et al. Serial CT and MR imaging of carmustine wafers. AJNR Am J Neuroradiol. 2000;21(1):119—23.(レベルⅢ)
8) Della Puppa A, Rossetto M, Ciccarino P, et al. The first 3months after BCNU wafers implantation in high—grade glioma patients:clinical and radiological considerations on a clinical series. Acta Neuro-chir(Wien). 2010;152(11):1923—31.(レベルⅢ))
9) De Bonis P, Anile C, Pompucci A, et al. Safety and efficacy of Gliadel wafers for newly diagnosed and recurrent glioblastoma. Acta Neurochir(Wien). 2012;154(8):1371—8.(レベルⅢ)
 補  遺 1 
ベバシズマブのStuppプロトコールへの上乗せ効果
最近発表された2つの第III相試験(AVAGlio試験,RTOG0825試験)において,全生存期間に関するベバシズマブのStuppプロトコールへの上乗せ効果は認められなかった。無増悪生存期間,QOL保持・改善の観点からはベバシズマブの上乗せ効果の評価は両試験が相反する結果となっている。
 解  説 
 ベバシズマブ(bevacizumab)は血管上皮成長因子に対するヒト化モノクロナール抗体であり,我が国では大腸がん,肺がん,乳がん,卵巣がんに対する治療薬として承認を得ている薬剤である。成人初発膠芽腫に対するベバシズマブの効果を検証した臨床試験はAVAGlio試験とRTOG0825試験の2つであり,いずれもその結果が2012~2013年にかけて学会発表された。両試験ともにCQ3の推奨1(p22)で示されているStuppプロトコールを標準治療としてベバシズマブの上乗せ効果を二重盲検法で検討したランダム化第Ⅲ相試験である。AVAGlio試験は2012年11月のSociety of Neuro—oncology年次総会で中間解析の結果1)が報告され,生活の質(quality of life:QOL)の評価2)さらにco—primary endpointsである全生存期間,無増悪生存期間確定値と最終解析結果3)も2013年6月の米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)年次総会で提示された。RTOG0825試験は2013年6月のASCO年次総会で主解析4),QOLと認知機能の評価5,6)が発表された。しかし,いずれも抄録,講演,講演後の討論が主な検討材料となっており,今後公開される情報を注意深く見守る必要がある。
 AVAGlio試験ではco—primary endpointsの1つである施設評価による無増悪生存期間は,中央値でプラセボ群6.2カ月,ベバシズマブ群10.6カ月であり,HR 0.64(95%CI:0.55—0.74,p<0.0001)とベバシズマブ群において有意な延長が認められた。もう1つのprimary endpointである全生存期間は,中央値でプラセボ群16.7カ月,ベバシズマブ群16.8カ月,HR 0.88(95%CI:0.76—1.02,p=0.0987)と両群に有意差は認められなかった。Co—primary endpointsの1項目無増悪生存期間においてベバシズマブの上乗せ効果が確認され,全生存期間では有意差が認められなかったがHRが1未満であったため,本試験はStuppプロトコールにベバシズマブを上乗せする意味はあると結論している。
 一方,RTOG0825試験では,同様にco—primary endpointsの1つである無増悪生存期間は,中央値でプラセボ群7.3カ月,ベバシズマブ群10.3カ月であり,HR 0.79(95%CI:0.66—0.94,p=0.007)という結果であった。RTOG0825試験では無増悪生存期間に関してあらかじめ有意水準を片側検定でp<0.002(両側検定でp<0.004に相当)と設定しているため,この結果は統計学的に有意水準には達していないと判定された。もう1つのprimary endpointである全生存期間は,中央値でプラセボ群16.1カ月,ベバシズマブ群15.7カ月,HR 1.13(95%CI:0.97—1.37,p=0.21)と有意差は認められなかった。無増悪生存期間においては,ベバシズマブの延長傾向を示すが設定有意水準には達せず,全生存期間は上乗せ効果が確認できなかったとして,本試験はStuppプロトコールにベバシズマブの上乗せ効果はないと結論している。
 このようにAVAGlio試験とRTOG0825試験において,無増悪生存期間と全生存期間は数値としてはほぼ一致した結果が得られたが,統計学的判定に相違があるため,全く異なった判断がなされることとなった。Co—primary endpointsのうち,一般により厳密なendpointとされる全生存期間は,いずれの試験も有意差を認めない結果であったが,クロスオーバーの比率,すなわちプラセボ群において再発時にベバシズマブを使用している症例の割合は,AVAglio試験では約30%,またRTOG0825試験では約40%でしかないため,これらの試験から再発時にベバシズマブを初めて投与することの全生存期間への影響を判断することは難しい。今後,両試験の詳細な報告やメタアナリシスなどが望まれる。
 さらにQOLの検討でもAVAglio試験とRTOG0825試験ではその判断は一致していない。AVAGlio試験では,secondary endpointの一つとしてQOL解析を掲げ,health—related QOLに関するEORTC QLQ—C30と脳腫瘍特異的な指標であるBN20を評価の指標とした。QLQ—C30では全般的健康状態,身体機能,社会生活機能を,BN20では運動機能,コミュニケーション能力を経時的に測定した2)。質問票のスコアが試験前の状態から10ポイント以上低下した場合を悪化と定め,悪化までの期間をプラセボ群とベバシズマブ群で比較したところ,上記5つの項目すべてにおいてベバシズマブ群で悪化までの期間が延長しており,屋内生活の自立が可能の目安とされるKPS 70以上の状態が3カ月延長した1)
 一方,RTOG0825試験では,附随研究として臨床症状評価にMD Anderson症状評価表—脳腫瘍版(MDASI—BT)を,QOLの評価にEORTC QLQ—C30を用いて解析を行っている。本試験ではこれらの視標を同一症例で経時的に追跡評価した。PDとなった症例はその時点からこの解析から除外されている。その結果,ベバシズマブ群において経時的にこのスコアが低下する傾向が認められた5)
 両試験とも無増悪生存期間はベバシズマブ投与によって延長しているにもかかわらず,QOL改善・維持の評価において大きな相違が発生した。その原因には,両試験におけるQOL解析方法の違いが挙げられているが,その他に調査票回収率など調査のコンプライアンスも関与していると考えられる。AVAGlio試験ではQOL検査がsecondary endpointであったため,試験開始後1年の時点でほぼ8割の患者で施行されているが,RTOG0825試験ではQOL解析は附随研究に位置づけられており,試験開始から34~46週の時点で検査結果回収率が約5割に留まっている。これらの詳細は不明であり,結果の解釈には注意を要すると思われる。したがって,現時点では,ベバシズマブの初期治療におけるQOLへの影響に関して結論が出ていない状況にある。
 有害事象についてAVAGlio試験では,実薬群において高血圧(グレード3以上:10.3%)や蛋白尿(同:3.7%)感染症(同:12.1%)がプラセボ群に比べて多く観察された。また動脈血栓症もグレード3以上の症例が4.1%とプラセボ群の1.3%より多かった1)。RTOG0825試験では,ベバシズマブ群で多くみられた有害事象として,高血圧(グレード3以上:4.6%),深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症(同:9.9%),創傷治癒障害(同:2.3%),消化管穿孔(同:1.3%),出血前兆症状(同:1.3%),好中球減少(同:15.1%)であり4),両試験の有害事象プロファイルも類似した結果であった。
 本稿は発表された学会抄録,会場における討論,本委員会での検討をもとにしている。これらの臨床試験結果や副次解析結果が明瞭に確定された後,Stuppプロトコール+ベバシズマブ治療に関するCQとその推奨レベルを本ガイドラインに追加提示する予定である。
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1) Chinot O, Wick W, Mason W, et al. PhaseⅢ trial of bevacizumab added to standard radiotherapy and temozolomide for newly—diagnosed glioblastoma:mature progression—free survival and preliminary overall survival results in avaglio. Neuro Oncol. 2012;14(suppl 6):vi101—vi105. doi:10. 1093/neu-onc/nos232
2) Henriksson R, Bottomley A, Mason W, et al. Progression—free survival(PFS)and health—related qual-ity of life(HRQoL)in AVAglio, a phaseⅢ study of bevacizumab(Bv), temozolomide(T), and radiotherapy(RT)in newly diagnosed glioblastoma(GBM). J Clin Oncol 2013;31(20 suppl):2005.
3) Wick W, Cloughesy TF, Nishikawa R, et al. Tumor response based on adapted Macdonald criteria and assessment of pseudoprogression(PsPD)in the phaseⅢ AVAglio trial of bevacizumab(Bv)plus temozolomide(T)plus radiotherapy(RT)in newly diagnosed glioblastoma(GBM). J Clin Oncol 2013;31(May 20 suppl):2002.
4) Gilbert MR, Dignam J, Won M, et al. RTOG 0825:PhaseⅢ double—blind placebo—controlled trial evaluating bevacizumab(Bev)in patients(Pts)with newly diagnosed glioblastoma(GBM). J Clin Oncol 2013;31(20 suppl):1.
5) Armstrong TS, Won M, Wefel JS, et al. Comparative impact of treatment on patient reported out-comes(PROs)in patients with glioblastoma(GBM)enrolled in RTOG 0825. J Clin Oncol 2013;31(20 suppl):2003.
 補  遺 2 
光線力学的療法
悪性神経膠腫(初発・再発)を含めた悪性脳腫瘍に対して,開頭腫瘍摘出術の際にタラポルフィンナトリウムと半導体レーザを用いた光線力学的療法を行うことが可能である。
 解  説 
 原発性悪性脳腫瘍に対する術中追加治療として,タラポルフィンナトリウムと半導体レーザを用いた光線力学的療法(photodynamic therapy:PDT)が2013年9月に国内で承認された。PDTの作用機序は,光感受性物質が集積した組織にレーザ光を照射することで光化学反応が引き起こされ,発生した一重項酸素が腫瘍組織を変性・壊死させるというものである。早期肺がんに続く治療対象疾患の拡大である。現在は標準治療への上乗せ効果が期待される集学的治療の一つとして位置づけられている。しかし,これまでの結果は限られた症例数から得られたものであり,今後,臨床研究や市販後調査によってより高いエビデンスレベルの効果・安全性に関する検証が必要である。
 脳腫瘍に対するPDTの臨床研究では,成人悪性神経膠腫を治療対象の主眼とした単施設での安全性確認を主目的とした前方視的研究報告があり,PDTと因果関係のある有害事象はなかった1)(レベルⅢ)。
 その後,国内2施設(東京女子医科大学ならびに東京医科大学)で第Ⅱ相試験として初発膠芽腫を中心とした悪性脳腫瘍を対象として医師主導治験が実施された2)(レベルⅡa)。手術の際にPDTを施行した有効性評価対象の22例(膠芽腫13例,退形成性神経膠腫7例,膠肉腫1例,退形成性変化を伴う毛様性星細胞腫1例)において,12カ月生存割合は95.5%であり,生存期間中央値は27.9カ月であった。このうち,術後Stuppプロトコールを行った初発膠芽腫13例の12カ月生存割合は100%,生存期間中央値は24.8カ月であった。タラポルフィンナトリウムの静脈投与を行った安全性評価対象の27例で,主に認められた有害事象は肝機能検査値異常であったが,グレード3以上のものは観察されなかった。投与後1週間で全被検者の8割が,投与後2週間ですべての被験者の光線過敏反応(日光等強い光に対する発赤等の皮膚反応)は消失した。
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1) Akimoto J, Haraoka J, Aizawa K. Preliminary clinical report on safety and efficacy of photodynamic therapy using talaporfin sodium for malignant gliomas. Photodiagnosis Photodyn Ther. 2012;9:91—9.(レベルⅢ)
2) Muragaki Y, Akimoto J, Maruyama T, et al. PhaseⅡ clinical study on intraoperative photodynamic therapy with talaporfin sodium and semiconductor laser in patients with malignant brain tumors. J Neurosurg 2013;119:845—52.(レベルⅡa)

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