CQ4 髄膜がん腫症に対する治療はどう選択するのか?
 推  奨 1 
腫瘍の広がりおよび粗大病変の存在に応じて放射線治療を行うことが勧められる。(推奨グレードC1)
 推  奨 2 
腫瘍の種類によって薬物療法を行ってもよい。(推奨グレードC1)
 推  奨 3 
髄膜がん腫症に伴う水頭症には髄液シャントあるいはドレナージを行ってもよい。(推奨グレードC1)
 解  説 
 固形がんの髄腔内播種病変に対する放射線治療の有効性に関しては一致した意見がない1—6)(いずれもレベルⅢ)。いずれも後方視的な研究であるが,肺がん,乳がん,胃がんによる髄膜がん腫症に対して全脳照射を追加した群と無施行群の比較では生存期間に差はなかったと報告されている1—3)(いずれもレベルⅢ)。一方,Ganiらは肺がんおよび乳がん患者に対して全脳照射単独で治療を行い,生存期間中央値は8.1週,6カ月および12カ月での生存割合はそれぞれ26%,15%であったことより,髄注化学療法を行えないような患者では放射線治療は有用だろうと結論している4)(レベルⅢ)。脳病変には一般的に全脳照射が行われることが多いが,全脊髄照射にまで無条件に照射野を広げることには反対意見が強い。全脊髄照射は骨髄機能を低下させることにより,全身薬物療法の実施を困難にする点にも留意しなければならない。一方,占拠性病変では髄腔内投与の抗がん薬は腫瘍内に十分に浸透しないと考えられ,放射線治療はそのような病変部位局所に用いられることがある。脊髄の症候性病変への照射は,痛みなどの症状緩和に有用なことがある。また,髄液灌流のブロックを起こしている部位への照射では,約半数において髄液灌流の回復が認められたという報告がある7)(レベルⅢ)。最近,上皮成長因子受容体(EGFR)変異を有する非小細胞肺癌による髄膜がん腫症に対してEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(エルロチニブやゲフィチニブ)と放射線治療の併用が有効であるとする報告が散見されるようになっている5)(レベルⅢ)。また,非小細胞肺癌の脳実質内転移では放射線治療にEGFR変異の有無にかかわらずエルロチニブを上乗せした群ではむしろ生存中央値が短くなる傾向があり,副作用の増強が関連している可能性も指摘されている点には注意が必要である(RTOG0320)8)(レベルⅡa)。今後の分子標的治療の発展により治療法が変わる可能性があるが,現時点では固形がんの髄膜がん腫症に対する姑息的な治療として全脳照射,粗大病変部や髄液灌流のブロックを起こしている部位に対して症状緩和を目的とした局所照射を考慮することが推奨される。
 髄膜がん腫症に伴う水頭症は頭痛や嘔吐,認知機能障害をきたしてQOLを悪化させる。脳室腹腔シャント術やドレナージ術等により,これらの症状の8割前後は改善する9—11)(いずれもレベルⅢ)。これらの報告では脳室腹腔シャント術後の生存期間中央値は2~3カ月であるが,シャント術後に何らかの治療を追加した群での生存期間はさらに長くなる傾向にある。問題点としては,シャント術等により髄注化学療法の実施が困難となる点が挙げられる。しかし,Linらはon—off valve(シャントの流れを一時的に止めることのできるバルブ)を備えた脳室腹腔シャントシステムは,リザーバー設置による髄注化学療法より全生存期間の有意な延長があり,症状緩和が得られると報告している10)(レベルⅢ)。また,Zagaらは圧可変式バルブの圧設定を高くすることによって髄腔内の抗がん薬濃度を維持できる可能性を示したが,多数例での検討は行われていない12)(レベルⅣ)。合併症には,圧設定不全等のシャント機能不全が10%程度で認められることや感染,稀ではあるが硬膜下血腫,脳内血腫,腹膜播種などの報告がある。
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1) Morris PG, Reiner AS, Szenberg OR, et al. Leptomeningeal metastasis from non—small cell lung can-cer:survival and the impact of whole brain radiotherapy. J Thorac Oncol. 2012;7(2):382—5.(レベルⅢ)
2) de Azevedo CR, Cruz MR, Chinen LT, et al. Meningeal carcinomatosis in breast cancer:prognostic factors and outcome. J Neurooncol. 2011;104(2):565—72.(レベルⅢ)
3) Oh SY, Lee SJ, Lee J, et al. Gastric leptomeningeal carcinomatosis:multi—center retrospective analy-sis of 54 cases. World J Gastroenterol. 2009;15(40):5086—90.(レベルⅢ)
4) Gani C, Muller AC, Eckert F, et al. Outcome after whole brain radiotherapy alone in intracranial leptomeningeal carcinomatosis from solid tumors. Strahlenther Onkol. 2012;188(2):148—53.(レベルⅢ)
5) Nakamura Y, Takahashi T, Tsuya A, et al. Prognostic factors and clinical outcome of patients with lung adenocarcinoma with carcinomatous meningitis. Anticancer Res. 2012;32(5):1811—6.(レベルⅢ)
6) Hermann B, Hültenschmidt B, Sautter—Bihl ML. Radiotherapy of the neuroaxis for palliative treat-ment of leptomeningeal carcinomatosis. Strahlenther Onkol. 2001;177(4):195—9.(レベルⅢ)
7) Chamberlain MC, Kormanik PA. Prognostic significance of llIndium—DTPA CSF flow studies in lep-tomeningeal metastases. Neurology. 1996;46(6):1674—7.(レベルⅢ)
8) Sperduto PW, Wang M, Robins HI, et al. A phase 3 trial of whole brain radiation therapy and stereo-tactic radiosurgery alone versus WBRT and SRS with temozolomide or erlotinib for non—small cell lung cancer and 1 to 3 brain metastases:Radiation Therapy Oncology Group 0320. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2013;85(5):1312—8.(レベルⅡa)
9) Lee SH, Kong DS, Seol HJ, et al. Ventriculoperitoneal shunt for hydrocephalus caused by central nervous system metastasis. J Neurooncol. 2011;104(2):545—51.(レベルⅢ)
10) Lin N, Dunn IF, Glantz M, et al. Benefit of ventriculoperitoneal cerebrospinal fluid shunting and intra-thecal chemotherapy in neoplastic meningitis:a retrospective, case—controlled study. J Neurosurg. 2011;115(4):730—6.(レベルⅢ)
11) Omuro AM, Lallana EC, Bilsky MH, et al. Ventriculoperitoneal shunt in patients with leptomeningeal metastasis. Neurology. 2005;64(9):1625—7.(レベルⅢ)
12) Zada G, Chen TC. A novel method for administering intrathecal chemotherapy in patients with lep-tomeningeal metastases and shunted hydrocephalus:case report. Neurosurgery. 2010;67(3 Suppl Operative):onsE306—7;discussion onsE7.(レベルⅣ)

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