CQ7 転移性脳腫瘍に対する抗てんかん薬はどう使用するのか?
 推  奨 1 
てんかん発作の既往がある場合に使用することが勧められる。(推奨グレードC1)
 推  奨 2 
てんかん発作の既往のない場合は,腫瘍摘出術および定位放射線照射の周術期などを除き,予防的な抗てんかん薬は使用しない。(推奨グレードC2)
 推  奨 3 
抗てんかん薬を使用する場合は,抗がん薬を含めた他剤との薬物相互作用に注意する。(推奨グレードC1)
 解  説 
 てんかん発作の既往がある転移性脳腫瘍に対しては抗てんかん薬を使用することが勧められる。しかし,てんかん発作の既往のない場合,予防的な抗てんかん薬の使用が有効であるという十分なエビデンスはなく,一般には抗てんかん薬の投与は行わない1)(レベルⅤ)。ただし,広範な浮腫を伴うテント上病変など,てんかん発作を伴うことが強く予想される場合には予防的な抗てんかん薬が用いられることもある。Forsythらは,原発性40例および転移性60例の計100例の脳腫瘍患者を対象に抗てんかん薬の発作抑制効果についてランダム化比較試験を行ったが,全体および転移性だけのサブグループ解析のいずれにおいても有意差は認められなかった2)(レベルⅠb)。米国神経学会(American Academy of Neurology)は,4つのランダム化比較試験のメタアナリシスにおいても抗てんかん薬による発作抑制効果は認められていないことから,抗てんかん薬の予防的使用は推奨していない3)(レベルⅠa)。さらに,2008年のThe Cochrane Database of Systematic Reviewによっても脳腫瘍患者に対する予防的な抗てんかん薬の使用による発作抑制効果は示されておらず,一方,副作用は有意に増加していた4)(レベルⅠa)。ただし,これらの結果は,抗てんかん薬としてフェニトイン,フェノバルビタール,バルプロ酸を使用した臨床試験である点に注意が必要である。
 抗てんかん薬を使用する場合には,薬物相互作用,特に薬物代謝酵素であるcytochrome P450の酵素誘導に注意が必要である(表1)5,6,7)(いずれもレベルⅤ)。すなわち,フェノバルビタールやカルバマゼピン,フェニトインなど一部の抗てんかん薬を長期間使用すると酵素誘導によってcytochrome活性が増強するため,cytochromeによる薬物代謝を受けるパクリタキセルや塩酸イリノテカンなどの殺細胞性抗がん薬,あるいはイマチニブ,ゲフィチニブ,テムシロリムスなどの分子標的治療薬の血中薬物濃度が低下して,ときに薬物効果にも影響することがある。また,デキサメタゾンの長期使用によってもcytochrome P3A4(CYP3A4)の酵素誘導が起こることが知られている。新規の抗てんかん薬であるレベチラセタムやガバペンチンは,薬物代謝酵素の誘導が少なく,臨床において問題となるような薬物相互作用が少ないという特徴を持つが,薬物療法時の相互作用のデータは乏しい。またこれら新規薬の単剤での使用は未承認である。
    表1 抗てんかん薬のcytochrome P450への影響
 
薬物相互作用への影響 抗てんかん薬
酵素誘導あり カルバマゼピン,フェニトイン,フェノバルビタール,プリミドン
酵素阻害あり バルプロ酸
問題となる相互作用はなし ラモトリギン,レベチラセタム,トピラマート,ゾニサミド,ガバペンチン,プレガバリン
                                              (文献7より改変)
(脳腫瘍診療ガイドライン拡大委員会 委員長追記:
ラモトリギンは2014年8月29日、てんかん患者の部分発作に対して単剤投与の適応が認められた。また、レベチラセタムも2015年2月20日、てんかん患者の部分発作に対して単剤投与の適応が認められた。)
◆文  献  成人転移性脳腫瘍CQ7構造化抄録一覧をダウンロード(エクセル形式)
1) Mikkelsen T, Paleologos NA, Robinson PD, et al. The role of prophylactic anticonvulsants in the man-agement of brain metastases:a systematic review and evidence—based clinical practice guideline. J Neurooncol. 2010;96(1):97—102.(レベルⅤ)
2) Forsyth PA, Weaver S, Fulton D, et al. Prophylactic anticonvulsants in patients with brain tumor. Can J Neurosci. 2003;30(2):106—12.(レベルⅠb)
3) Glantz MJ, Cole BF, Forsyth PA, et al. Practice parameter:anticonvulsant prophylaxis in patients with newly diagnosed brain tumors. Report of the Quality Standards Subcommittee of the Ameri-can Academy of Neurology. Neurology. 2000;54(10):1886—93.(レベルⅠa)
4) Tremont—Lukats IW, Ratilal BO, Armstrong T, et al. Antiepileptic drugs for preventing seizures in people with brain tumors. Cochrane Database Syst Rev. 2008;16(2):CD004424.(レベルⅠa)
5) Yap KY, Chui WK, Chan A. Drug interactions between chemotherapeutic regimens and antiepilep-tics. Clin Ther. 2008;30(8):1385—407.(レベルⅤ)
6) Kargiotis O, Markoula S, Kyritsis AP. Epilepsy in the cancer patient. Cancer Chemother Pharmacol. 2011;67(3):489—501.(レベルⅤ)
7) Sperling MR, Ko J. Seizures and brain tumors. Semin Oncol. 2006;33(3):333—41.(レベルⅤ)

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