CQ4 高齢者PCNSLに対してどのような治療が推奨されるか?
 推  奨 1 
遅発性中枢神経障害の発生を軽減するため,高齢者における初発時の治療として,導入化学療法後CRとなった症例については,全脳照射を減量ないし待機とした治療法を考慮する。(推奨グレードC1)
 解  説 
 60歳以上あるいは70歳以上の高齢者PCNSLに対しての治療は,高率に遅発性中枢神経障害の出現が生じるなど,未だ確立していない。
 治療後の遅発性神経毒性(delayed neurotoxicity)は,進行性の認知障害など,腫瘍の再発がなくとも急速に患者のQOLを低下させる主因となり,その原因の一つに全脳照射が挙げられている。全脳照射後の神経認知機能障害の発症リスクは,高齢者(特に60歳以上),総照射線量,化学療法の併用,化学療法と全脳照射の順序(特に同時ないし全脳照射後の化学療法)で増加することが知られている。AbreyらはHD—MTX療法+MTX髄注+全脳照射40 Gy+局所照射14.4 Gy+HD—AraC療法を行ったPCNSL症例のうち,60歳以上の症例で有意に遅発性神経毒性の発生リスクが高かった(p<0.0001)と報告しており1)(レベルⅢ),60歳以上の高齢者に対しては初期治療での全脳照射を回避し,化学療法単独治療を推奨している。しかし,この試験治療では脳実質を直接障害するリスクのあるMTX髄注治療が含まれていること,HD—MTX療法自体が脳実質への浸透性が高く,神経障害を惹起する治療法であることから,全脳照射のみが遅発性神経毒性の原因との結論には注意を要する。
 ZhuらはMassachusetts General Hospitalでの70歳以上初発PCNSL 31例に対し,HD—MTX単独で治療を行い,有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events:CTCAE)でグレード3/4の有害事象は3~7%と少なく,生存期間中央値(MST)37カ月と良好な治療成績を報告した2)(レベルⅢ)。高齢者ではHD—MTX療法による毒性が強く出ることが懸念されるが,Jahnkeらの報告では60歳を超える患者を89%含む対象に対して,4 g/m2のHD—MTX療法を含む治療を報告しているが,グレード3以上の毒性は10%未満であった3)(レベルⅢ)。よって,高齢者でも腎機能・MTX血中濃度にあわせた管理を行えば,HD—MTX療法が可能と考えられている。Omuroらは,60歳を越える初発PCNSL 23例に対し,HD—MTX療法とテモゾロミド(TMZ)(悪性リンパ腫には保険適応外)を併用した初期治療を施行し,画像上の奏効割合が55%,MSTが35カ月であったと報告している4)(レベルⅢ)。
 高齢者PCNSLに対する治療の問題点は,全脳照射を待機した場合,これら化学療法単独ではCRを獲得できる割合は高くなく,disease—freeの状態に持ち込める割合が低いことにある。すなわち,照射を回避した化学療法単独療法による有意に優れた治療成績は得られていないのが現状であり,生命予後が不良となる可能性がある。Omuroらの報告ではORRが55%に過ぎず,無増悪生存期間の中央値も8カ月に留まっていた。Zhuらの報告ではORR 97%と高率で縮小は認めたが,無増悪生存期間の中央値は7カ月であった。高齢者では自家幹細胞移植による大量化学療法などの強力な化学療法における全身合併症のリスクも高くなり,初期化学療法でCRとならない症例に二次治療でさらに骨髄抑制の強い治療レジメンを追加することは通常困難である。
 これらの現状からは,高齢者においては,全脳照射を省略した場合,生命予後が不良となる可能性があるが,神経毒性を回避する目的で全脳照射なしの初期治療を行い,再発時に全脳照射で救済する方法や,初期治療で低線量(24 Gy程度)全脳照射を行う方法も考慮してよいと考えられる。
◆文  献  中枢神経系原発悪性リンパ腫CQ4構造化抄録一覧をダウンロード(エクセル形式)
1) Abrey LE, DeAngelis LM, Yahalom J. Long—term survival in primary CNS lymphoma. J Clin Oncol. 1998;16(3):859—63.(レベルⅢ)
2) Zhu JJ, Gerstner ER, Engler DA, et al. High—dose methotrexate for elderly patients with primary CNS lymphoma. Neuro Oncol. 2009;11(2):211—5.(レベルⅢ)
3) Jahnke K, Korfel A, Martus P, et al. German Primary Central Nervous System Lymphoma Study Group(G—PCNSL—SG). High—dose methotrexate toxicity in elderly patients with primary central nervous system lymphoma. Ann Oncol. 2005;16(3):445—49.(レベルⅢ)
4) Omuro AM, Taillandier L, Chinot O, et al. Temozolomide and methotrexate for primary central ner-vous system lymphoma in the elderly. J Neurooncol. 2007;85(2):207—11.(レベルⅢ)

ページトップへ戻る