CQ5 PCNSLに対する放射線治療ではどのような照射野と照射線量が推奨されるか?
 推  奨 1 
照射野は全脳が推奨される。(推奨グレードC1)
 推  奨 2 
照射線量は,全脳に30~40 Gy(1回線量1.8~2.0 Gy)が推奨される。(推奨グレードB)
 解  説 
 PCNSLに対する放射線治療においては,極めて高い浸潤性増殖性格のため,照射野は全脳照射が経験的に推奨されてきた。照射野を限局する試みでは,4 cm以上の腫瘍辺縁域を含めた広範囲照射群で明らかに再発が少なく,生存期間の延長が認められた1)(レベルⅣ)。したがって,病巣に限局した局所照射では腫瘍制御は不十分と考えられる。
 照射線量に関しては,文献上報告されていた全脳照射単独が施行された188例のデータの解析で,50 Gy以上の照射線量で治療された症例で有意に予後が良好であったとの報告が最初になされた2)(レベルⅢ)。次いで,PCNSLにおける世界初の前方視的臨床試験であったRTOG83—15試験では,全脳40 Gy照射後に20 Gyの局所追加照射が行われたが,生存期間中央値(MST)は11.6カ月に留まり,追加照射による腫瘍制御や生存期間延長効果は認められなかった3)(レベルⅡb)。RTOG93—10試験では初期化学療法後CRの症例で多分割照射36 Gy(1.2 Gy×2回/日)を行い,通常の45 Gy照射群と同様の治療結果が得られた。しかし,多分割照射により神経毒性の軽減が試みられたが,通常の分割(45 Gy/25 fr)と比べグレード5の神経毒性出現までの期間は遅延するものの,発生率に有意差は認められなかった4)(レベルⅡb)。
 全脳照射線量減量の試みとして,対照の全脳45 Gyに対し,化学療法でCRとなった症例では30.6 Gyとする臨床試験が行われたが,3年生存割合が前者で92%,後者で60%と有意に30.6 Gy群が不良との結果であった。特に,60歳未満の若年症例で有意に再発率増大,生存割合低下が認められた5)(レベルⅡb)。この結果は,この試験で使用された化学療法[CHOD/BVAM:シクロホスファミド,ドキソルビシン,ビンクリスチン,デキサメタゾン(CHOD)/カルムスチン,ビンクリスチン,メトトレキサート,シタラビン(BVAM)]との併用の際には,最低30.6 Gy以上の全脳照射が必要であることを示唆している。これに対して,MSKCCのグループは化学療法[HD—MTX,プロカルバジン(procarbazine:PCZ),ビンクリスチン(vincristine:VCR),リツキシマブ]でCRとなった症例群に対しては全脳23.4 Gyの照射に留め,照射後にHD—AraC療法を地固め療法として追加する臨床試験を施行中であり,17例の化学療法CR例において,PFSが45 Gy全脳照射治療を行った過去の治療成績に劣らなかったと報告している6)(レベルⅡb)。本療法の長期観察結果は,2012年の米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)にて発表された。また,この減量放射線療法によって認知機能低下が軽減したという少数例での前方視的研究の結果が報告されている7)(レベルⅡb)。我が国でのPCNSL研究会では,化学療法後に全脳30 Gyを行い,残存腫瘍があれば局所10 Gyのboost照射を行う臨床試験が行われており,MSTは44カ月であった8)(レベルⅡb)。Ferreriらは,HD—MTX基盤による初期化学療法によりCRを達成したPCNSL症例で,地固め照射として全脳照射を40 Gy以上施行した群と,30~36 Gyを施行した群について,後方視的解析を行った。再発率(前者46%,後者30%),5年無再発率(同51% vs. 50%;p=0.26)ともに有意差はなく,全脳照射線量は36 Gyが望ましいと報告している9)(レベルⅢ)。以上より,現時点では全脳照射30~45 Gyの範囲が推奨される照射線量と考えられる。
◆文  献  中枢神経系原発悪性リンパ腫CQ5構造化抄録一覧をダウンロード(エクセル形式)
1) Shibamoto Y, Hayabuchi N, Hiratsuka J, et al. Is whole—brain irradiation necessary for primary cen-tral nervous system lymphoma? Patterns of recurrence after partial—brain irradiation. Cancer. 2003;97(1):128—33.(レベルⅣ)
2) Murray K, Kun L, Cox J. Primary malignant lymphoma of the central nervous system. Results of treatment of 11 cases and review of the literature. J Neurosurg. 1986;65(5):600—7.(レベルⅢ)
3) Nelson DF, Martz KL, Bonner H, et al. Non—Hodgkin’s lymphoma of the brain:can high dose, large volume radiation therapy improve survival? Report on a prospective trial by the Radiation Therapy Oncology Group(RTOG):RTOG 8315. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1992;23(1):9—17.(レベルⅡb)
4) Fisher B, Seiferheld W, Schultz C, et al. Secondary analysis of Radiation Therapy Oncology Group study(RTOG)9310:an intergroup phaseⅡ combined modality treatment of primary central ner-vous system lymphoma. J Neurooncol. 2005;74(2):201—5.(レベルⅡb)
5) Bessell EM, Lopez—Guillermo A, Villa S, et al. Importance of radiotherapy in the outcome of patients with primary CNS lymphoma:an analysis of the CHOD/BVAM regimen followed by two different radiotherapy treatments. J Clin Oncol. 2002;20(1):231—6.(レベルⅡb)
6) Shah GD, Yahalom J, Correa DD, et al. Combined immunochemotherapy with reduced whole—brain radiotherapy for newly diagnosed primary CNS lymphoma. J Clin Oncol. 2007;25(30):4730—5.(レベルⅡb)
7) Correa DD, Rocco—Donovan M, DeAngelis LM, et al. Prospective cognitive follow—up in primary CNS lymphoma patients treated with chemotherapy and reduced—dose radiotherapy. J Neurooncol. 2009;91(3):315—21.(レベルⅡb)
8) 泉本修一,森鑑二,有田憲生.中枢神経系悪性リンパ腫研究会:悪性リンパ腫に対するHD—MTX療法の長期成績と問題点―多施設共同研究から.第26回日本脳腫瘍学会抄録集.2008:130.(レベルⅡb)
9) Ferreri AJ, Verona C, Politi LS, et al. Consolidation radiotherapy in primary central nervous system lymphomas:impact on outcome of different fields and doses in patients in complete remission after upfront chemotherapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2011;80(1):169—75.(レベルⅢ)

ページトップへ戻る