(ステロイド療法)
CQ2-a 診断確定前にステロイド療法は施行するべきか?
推 奨
生検術前のステロイド使用は,ステロイドによる標的病変の縮小が高頻度に生じるため,手術時に生検的中率が低下するリスクがあり,可能な限り投与を控える。(推奨グレードC2)
CQ2-b 診断確定後のステロイド療法の位置づけは?
推 奨1
PCNSLに対するステロイド療法は,一過性の腫瘍縮小効果が認められることが多く,また,症状緩和目的に使用されることも多い。(推奨グレードC1)
推 奨2
ステロイドは治癒的効果に乏しいため,治癒目的の単独使用は推奨されない。(推奨グレードC2)
解 説
 糖質コルチコイドの主たる作用機序は,核内受容体を介した腫瘍細胞への直接的細胞融解効果であり,血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)の再構築効果も併せて,半数近くの症例で投与後急速な腫瘍縮小がみられる 〔complete response(CR)15%,partial response(PR)25%〕1)レベルⅢ)。しかしこの治療効果は一過性であり2)レベルIV),一般に数週から数カ月で腫瘍は再燃し,根治性に乏しい。
 術前のステロイド投与は,標的病巣の急速な縮小により生検による腫瘍細胞検出が困難となることがあり,また病理組織像も修飾を受けるため,術前にはできるだけステロイド投与を控えることが肝要である3)レベルV)。ただし,強い脳浮腫や腫瘍のmass effectを伴うような場合など,臨床上必要と考えられる場合は,治療開始前の病状安定化目的のためステロイド使用もやむを得ない。
 なお,初発PCNSL症例で,ステロイドに対する治療反応を示した症例と反応が見られなかった症例との比較では,前者で生存期間中央値が17.9カ月であったのに対し,後者では5.5カ月にすぎなかったとの報告もあり,初発時のステロイド反応性は予後良好因子である可能性が指摘されている4)レベルV)。
◆文  献
1) ●DeAngelis LM, Yahalom J, Heinemann MH, et al. Primary CNS lymphoma: combined treatment with chemotherapy and radiotherapy. Neurology. 1990;40(1):80-86 (レベルIII)
2) Pirotte B, Levivier M, Goldman S, et al. Glucocorticoid-induced long-term remission in primary cerebral lymphoma: case report and review of the literature. J Neurooncol. 1997;32(1):63-69 (レベルIV)
3) ●Weller M. Glucocorticoid treatment of primary CNS lymphoma. J Neurooncol. 1999;43(3):237-239 (レベルV)
4) ●Mathew BS, Carson KA, Grossman SA. Initial response to glucocorticoids. Cancer. 2006;106(2):383-387 (レベルV)

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