成人脳腫瘍編 改訂2版
成人膠芽腫 改訂2版・成人転移性脳腫瘍・中枢神経系原発悪性リンパ腫
◎編集:特定非営利活動法人日本脳腫瘍学会 ◎監修:一般社団法人日本脳神経外科学会
第1版 序

 日本癌治療学会がん診療ガイドライン「脳腫瘍」は,一般社団法人日本脳神経外科学会から特定非営利活動法人日本脳腫瘍学会にその作成が委託され,悪性脳腫瘍に関する診療ガイドラインを作成するに至りました。平成23 年5 月に広島大学杉山一彦教授を委員長とし,日本脳腫瘍学会理事を中心にガイドライン委員会が組織され,第1 回の会合がもたれました。原発性脳腫瘍は,140 種類以上の組織に細分され,それぞれの発生頻度が低いため,治療に関するエビデンスが乏しいと言えます。そこでまず,脳腫瘍のなかでも比較的発生頻度が高く,ある程度のエビデンスが蓄積されている成人膠芽腫,成人転移性脳腫瘍,中枢神経系原発悪性リンパ腫の3 腫瘍についてガイドライン作成が始められました。
 現時点でのエビデンスとなり得る論文をもとに,clinical question に対する回答を作成し,すべての項目についてガイドライン委員全員による査読が行われました。さらに必要に応じて,腫瘍内科,放射線治療科の専門医の先生方のご助言をいただき,最終的には日本脳神経外科学会,日本癌治療学会の承認を得て,刊行するに至りました。
 前述の如く,エビデンスの少ない領域ではありますが,現時点で実臨床に即したガイドラインと成り得たものと思われます。今後,適宜改訂を進めるとともに,比較的発生頻度の高い脳腫瘍から順次追加していく予定であります。
 本ガイドライン作成に携わられた委員の先生方のご努力に感謝致します。  

平成28年6月
特定非営利活動法人日本脳腫瘍学会
前理事長 渋井壮一郎
第1版 あとがき

 脳腫瘍診療ガイドラインは,日本癌治療学会から日本脳神経外科学会に相談があり,同学会からこの日本脳腫瘍学会に作成の指示があったという経緯が伝わっている。暫くの懸案であった脳腫瘍診療ガイドラインプロジェクトは,2011 年5 月19 日東京八重洲ホテル紅葉の間における第一回脳腫瘍診療ガイドライン拡大委員会からようやく始まった。
 手探りの状態から議論は始まり,脳腫瘍取扱い規約との棲み分け,エビデンスレベル,推奨レベルの設定基準,想定読者などの議論を経て,各論というべき,本書の3 疾患のガイドライン作成に取り掛かった。そして紆余曲折5 年が経過して,ついに本書が日の目を見ることになった。感慨無量である。
 感傷に浸っている暇もなく,小児脳腫瘍,lower grade glioma と脳腫瘍診療ガイドライン作成は切れ目なく進行中である。
 財政的基盤の弱い特定非営利活動法人日本脳腫瘍学会を支え,手弁当で本ガイドライン作成にご尽力いただいた,多くの執筆者の先生方に熱く感謝の意を表する。

平成28年6月10日
特定非営利活動法人日本脳腫瘍学会
理事長 西川 亮 リバプールにて
成人脳腫瘍ガイドライン3分野 改訂2版 改訂のポイント

 従前ガイドライン公開後のpivotal studyの結果と薬剤や治療法の承認状況を改訂委員が抽出し、改訂作業を進めた。改訂草案を特定非営利活動法人 日本脳腫瘍学会 脳腫瘍診療ガイドライン拡大委員会に提出し、同委員会がこの草案を承認した。これらの過程は公益財団法人 日本医療機能評価機構が示すEBM普及推進事業Minds(マインズ)の「診療ガイドライン作成の手引き2007」(Minds2007)に従い行った。 以下、成人膠芽腫、成人転移性脳腫瘍、中枢神経系悪性リンパ腫 各分野の改訂ポイントを示す。

日本脳腫瘍学会 脳腫瘍診療ガイドライン拡大委員会 委員長
広島大学病院がん化学療法科
杉山 一彦
1.成人膠芽腫(GBM)ガイドライン
  CQ3 成人初発膠芽腫に対する化学療法の種類と意義はどのようなものがあるか?
    ・推奨6(インターフェロン—β) 推奨グレードC1→C2に変更した。
・旧補遺1(ベバシズマブ)→推奨8に変更し、推奨グレードはC1とした。
・旧補遺2(光線力学療法)→CQを別立てし、CQ4とした。
  CQ4 悪性神経膠腫(初発・再発)を含めた悪性脳腫瘍に対して,開頭腫瘍摘出術の際のタラポルフィンナトリウムと半導体レーザを用いた光線力学的療法は有効か?
    旧CQ3の補遺2を,光線力学療法を扱う新CQとして別立てにした。推奨グレードはC1。
  CQ5 膠芽腫に対する,交流電場腫瘍治療システム(NovoTTF-100A システム)の使用は有効か?
    交流電場療法を扱うCQとして新設した。初発テント上GBMに対する使用の推奨を示した。
  CQ6 成人再発膠芽腫に対する治療はどのように行うか?
    旧CQ4(再発GBM)からCQ6に変更した。
  CQ7 高齢者初発膠芽腫に対して手術後どのような治療が推奨されるか?
    旧CQ5(高齢者GBM)からCQ7に変更し、内容を改訂した
2.成人転移性脳腫瘍ガイドライン
  CQ1-a 単発あるいは少数個の転移性脳腫瘍の治療はどう選択するのか?
    推奨3(全脳照射+定位放射線照射) ・少数個の場合 推奨グレードをC1→Bに変更。
推奨4(定位放射線照射単独治) 推奨グレードをC1→Bに変更。
  CQ1-b 多数個の転移性脳腫瘍の治療はどう選択するのか?
    推奨5(定位放射線照射単独治療)を新設。推奨グレードはC1。
  CQ7 抗てんかん薬の適応拡大に伴い、記載を一部変更した。
3.中枢神経系悪性リンパ腫ガイドライン
CQ新旧対応表
旧CQ 新CQ コメント
1 手術
2 ステロイド
13 検査staging
3 治療
6 化学療法内容
10 リツキシマブ
5 放射線治療
7 RTなし化学療法単独
9 大量化学療法
なし
8 髄注療法
11 BBBD
4 高齢者
14 IOL
12 再発治療
1 手術
2 ステロイド
3 検査staging
4 初発時治療(寛解導入療法①)
5 多剤併用療法(寛解導入療法②)
6 リツキシマブ(寛解導入療法③)
7 放射線治療
8 地固め療法(薬物療法)
8 大量化学療法
9 維持療法
10 髄注療法
11 BBBD
12 高齢者
13 IOL
14 再発治療
 
 
CQ1にしてもよい
寛解導入
寛解導入
寛解導入

→削除

新規
  CQ1: 手術) PCNSLの診療における手術の位置づけは?
    旧版の推奨2)「生検術が推奨される」を削除。
  CQ4: (寛解導入療法①初発時治療) PCNSLに対してどのような初発時治療が推奨されるか?
    ① 推奨は特に変更なし。解説に項目別に追記した。
② 推奨の註に、参照すべきCQ番号を付記(推奨グレードを外す)。
  CQ5: (寛解導入療法②多剤併用療法) PCNSLに対する寛解導入療法として多剤併用化学療法が推奨されるか?
    ① 承認薬を使用する具体的レジメン名(RMPV、(R)MA)を記載し、推奨グレードをC1からBへ変更した。解説を改訂した。
② リツキシマブについては、旧CQ10からCQ6へ変更、解説を改訂した。
  CQ6: (寛解導入療法③リツキシマブ) PCNSLに対してリツキシマブの併用は推奨されるか?
    「MTX基盤化学療法に併用しても良い」(グレードC1)に変更した。
  CQ7: (放射線治療の意義と実際)
CQ7-a PCNSLに対する放射線治療ではどのような照射野が推奨されるか?
CQ7-b PCNSLに対する放射線治療ではどのような照射線量が推奨されるか?
    a) 照射野→「眼球」を含む全脳に修正。グレードはC1からAに変更。
b) 照射線量→治療対象を4分類し記載。グレードはBで不変(緩和のC1以外)。
  旧CQ-8:(地固め療法②:薬物療法)
    地固め療法だけのエビデンスを抽出するのが困難なため、CQ4,CQ5の解説中に記載し、地固め療法のCQは削除した。
  CQ8: (大量化学療法) PCNSLに対して自家幹細胞移植を伴う大量化学療法は推奨されるか?
    ① 推奨文言の整備、②初発と再発で推奨を分割した。推奨内容は変わらず(C2)。
② 解説に最近の知見を追記。
  CQ-9: (維持療法) 寛解導入後の維持療法は推奨されるか?
    ① 新規に追加したCQ。
② 試験結果がいくつか報告あるが、一般臨床として推奨される段階ではないため推奨グレードC2とした。
  CQ-10: (維持療法) 寛解導入後の維持療法は推奨されるか?
    ① 新規に追加したCQ。
② 試験結果がいくつか報告あるが、一般臨床として推奨される段階ではないため推奨グレードC2とした。
  CQ-12: (高齢者治療) 高齢者PCNSLに対してどのような治療法が推奨されるか?
    ① HD-MTX基盤導入化学療法後CR例で全脳照射を減量・待機を考慮(グレードC1)で不変。
② 最近のメタ解析結果、第II相試験結果(複数)を解説に追記。解説大幅に改訂した。
  CQ-13: (IOL治療法) 眼球内リンパ腫にはどのような治療法があるか?
    ① 「放射線照射、MTX硝子体注射(保険適応外)が推奨」と明言(グレードC1は不変)。
② MTX局注は局所制御を目的として、IRB承認、研究費等で実施施設もあることを考慮した。
③ 全身・脳への再発予防の全身療法は解説内記載を行った。
  CQ-14: (再発治療) 再発PCNSLに対し,どのような治療法が推奨されるか?
    ① HD-MTX基盤療法の再投与の推奨グレードは不変、解説を改訂。
② 再発時の全脳照射(グレードC1)を追加。
本改訂にご協力頂いた学会
  公益社団法人 日本放射線腫瘍学会
公益社団法人 日本臨床腫瘍学会
一般社団法人 日本血液学会
公益社団法人 日本眼科学会
目  次
成人膠芽腫
  ■総論 本ガイドラインの目的 対象患者 利用対象者 成人膠芽腫の概括 膠芽腫の定義 膠芽腫の予後因子 フローチャート CQと推奨の一覧
ガイドライン統括委員会 成人膠芽腫ガイドライン改訂working group 利益相反 改訂予定 文献検索
  CQ1 成人初発膠芽腫に対する手術療法はどのような意義があるか?
  CQ2 成人初発膠芽腫に対する放射線治療はどのような意義があるか?
  CQ3 成人初発膠芽腫に対する化学療法の種類と意義はどのようなものがあるか?
  CQ4 悪性神経膠腫(初発・再発)を含めた悪性脳腫瘍に対して,開頭腫瘍摘出術の際のタラポルフィンナトリウムと半導体レーザを用いた光線力学的療法は有効か?
  CQ5 膠芽腫に対する,交流電場腫瘍治療システム(NovoTTF-100A システム)の使用は有効か?
  CQ6 成人再発膠芽腫に対する治療はどのように行うか?
  CQ7 高齢者初発膠芽腫に対して手術後どのような治療が推奨されるか?
成人転移性脳腫瘍
  ■総論 本ガイドラインの目的 対象患者 利用対象者 成人転移性脳腫瘍の概括(成人転移性脳腫瘍の現状
神経学的機能障害および症状と生命予後への影響 原発巣の違いによる病態の差異 リスク因子と生存期間の予測 治療前評価と治療効果判定) フローチャート CQと推奨の一覧 ガイドライン統括委員会 成人転移性脳腫瘍ガイドライン改訂working group 利益相反 改訂予定
文献検索
  CQ1-a 単発あるいは少数個の転移性脳腫瘍の治療はどう選択するのか?
  CQ1-b 多数個の転移性脳腫瘍の治療はどう選択するのか?
  CQ2 転移性脳腫瘍の治療のなかで薬物療法(分子標的治療薬を含む)はどう選択するのか?
  CQ3 再発の転移性脳腫瘍の治療はどう選択するのか?
  CQ4 髄膜がん腫症に対する治療はどう選択するのか?
  CQ5 頭蓋骨転移に対する治療はどう選択するのか?
  CQ6 転移性脳腫瘍に対するステロイドや浸透圧利尿薬はどう使用するのか?
  CQ7 転移性脳腫瘍に対する抗てんかん薬はどう使用するのか?
中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)
  ■総論 本ガイドラインの目的 対象患者 利用対象者 中枢神経系原発悪性リンパ腫の概括 中枢神経系原発悪性リンパ腫 予後規定因子
PCNSLの治療前評価と治療効果判定 治療法 遅発性中枢神経障害 フローチャート CQと推奨の一覧 ガイドライン統括委員会
中枢神経系原発悪性リンパ腫ガイドライン改訂working group 利益相反 改訂予定 文献検索
(手術)
  CQ1 PCNSLの診療における手術の位置づけは?
(ステロイド療法)
  CQ2-a 診断確定前にステロイド療法は施行するべきか?
  CQ2-b 診断確定後のステロイド療法の位置づけは?
(Staging・全身検査,眼科検査)
  CQ3 脳リンパ腫に対して眼科的検査,全身精査は必要か?
(寛解導入療法①初発時治療)
  CQ4 PCNSLに対してどのような初発時治療が推奨されるか?
(寛解導入療法②多剤併用療法)
  CQ5 PCNSLに対する寛解導入療法として多剤併用化学療法が推奨されるか?
(寛解導入療法③リツキシマブ)
  CQ6 PCNSLに対してリツキシマブの併用は推奨されるか?
(放射線治療の意義と実際)
  CQ7-a PCNSLに対する放射線治療ではどのような照射野が推奨されるか?
  CQ7-b PCNSLに対する放射線治療ではどのような照射線量が推奨されるか?
① 寛解導入療法CR後の「地固め」照射
② 寛解導入療法PR以下の際や,再発時の救済照射
③ 薬物療法不適応の際の代替治療としての照射
④ 緩和照射の場合
(大量化学療法)
  CQ8 PCNSLに対して自家幹細胞移植を伴う大量化学療法は推奨されるか?
(維持療法)
  CQ9 寛解導入後の維持療法は推奨されるか?
(髄注療法)
  CQ10 PCNSLに対する抗がん薬の髄注療法は推奨されるか?
(BBBD)
  CQ11 PCNSLに対して血液脳関門破綻療法(BBBD)を併用した化学療法は推奨されるか?
(高齢者治療)
  CQ12 高齢者PCNSLに対してどのような治療法が推奨されるか?
(IOL治療法)
  CQ13 眼球内リンパ腫にはどのような治療法があるか?
(再発治療)
  CQ14 再発PCNSLに対し,どのような治療法が推奨されるか?

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