用語名 |
解 説 |
上衣下結節(subependymal nodule:SEN) |
側脳室上衣下に認められる通常10mm以下の結節性病変。多発することが多い。石灰化を伴うこともある。腫瘍性増殖を示すことは原則としてないが,モンロー孔近傍に存在する場合はSEGAとの鑑別が必要となる。
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腎血管筋脂肪腫(angiomyolipoma:AML) |
結節性硬化症の腎臓にしばしば両側性,多発性に発生する血管・平滑筋・脂肪から構成される腫瘍。10歳以降に発生することが多い。しばしば無症状のまま増大して巨大化する。突然,腫瘍内出血を生じることもある。腫瘍の大きさ,腫瘍血管の動脈瘤の状態などを考慮して治療を選択する。
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体細胞変異 |
突然変異によるTSC遺伝子変異が体細胞系列の細胞集団に生じたもの。突然変異が生殖細胞系列との分化前に発生すると,体細胞変異は生殖細胞変異と共存するが,分化後であればどちらか一方の系列に限定したモザイクとなる。
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大脳皮質結節(cortical tuber) |
結節性硬化症に合併する脳病変の一つ。大脳皮質に通常は複数の腫瘤状結節を形成する。結節の皮質下白質はMRI T2強調画像で高信号域を示し,深部に向かう放射状神経細胞移動線を認めることがある。腫瘍性増大・神経活動も示すことはないが,周辺脳組織にてんかん原性を伴うことがある。
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肺リンパ脈管平滑筋腫症 (lymphangioleiomyomatosis:LAM) |
平滑筋様の腫瘍細胞が肺で増殖して多発性のう胞を形成する。結節性硬化症の女性患者で20~40歳に発症することが多い。初期は無症状だが,進行すると自然気胸や動作時呼吸困難を生じるため,臨床的に重要な肺病変である。
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不全型(モザイク等) |
結節性硬化症では個々の患者の表現度の差異が大きく臨床診断基準を満たさない不全型が存在する。その一つの機序としてモザイク変異が知られる。これはTSC遺伝子変異が,受精後の突然変異で生じた場合であり,遺伝子変異を持つ細胞と持たない細胞が体内で混合する。この場合,結節性硬化症の臨床発現形態は遺伝子変異を持つ細胞にのみ発現するため不全型となる。
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mTOR |
細胞成長・増殖に不可欠なキナーゼタンパク。ラパマイシン(細胞の成長・増殖を抑制,mTOR活性を抑制する薬物)の結合タンパク。異常な活性亢進は結節性硬化症や腫瘍性病変などの原因となる。
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mTORシグナル伝達経路 |
インスリン・成長因子の刺激を受け,栄養・エネルギーのレベルを検知して,TSC1/TSC2複合体がそれらの情報を統合し,Rheb(Ras homolog enriched in brain)を介してmTOR複合体1(mTORC1)活性を制御することにより細胞の成長・増殖,細胞骨格形成,栄養の取り込み,細胞死(アポトーシス)抑制などを調節する経路。
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TSC1遺伝子 |
染色体9q34に位置しhamartinタンパクをエンコードする。結節性硬化症の発症にはTSC1/TSC2遺伝子変異が関与する。TSC2と結合して複合体(TSC complex)を形成し,mTORシグナル伝達経路においてmTOR活性を抑制する。
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TSC2遺伝子 |
染色体16p13.3に位置しtuberinタンパクをエンコードする。TSC1と結合して複合体を形成し,mTOR活性を抑制する。
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